8士業や10士業に含まれる社会保険労務士。合格すると、社会保険労務士と名乗り、人事労務管理系の仕事をすることができる人気資格です。
自分は令和2年の社労士試験に合格しました。
そこで、自分の実体験をもとに、勉強法や使ったテキストなどをご紹介していきます。
試験概要
社労士試験は毎年1回、8月の第4日曜日に行われます。
令和2年の合格率は6.4%となっており、難関資格の1つとされています。
試験科目は以下の通りです。
- 労働基準法
- 労働安全衛生法
- 労働者災害補償保険法
- 雇用保険法
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律
- 労務管理その他の労働に関する一般常識
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 国民年金法
- 社会保険に関する一般常識
問題回答形式はマークシート式。つまり、論述はなくすべて選択問題となります。
社労士試験の穴
マークシート方式と聞くと簡単なイメージを持たれる方も多いかもしれません。
でも、それなのに合格率1桁という結果には理由があります。
それは、『基準点』です。
社労士試験において定められている基準点は以下の通りです。
- 選択式試験総得点40点中28点以上、かつ各科目5点中3点以上
- 択一式試験総得点70点中49点以上、かつ各科目10点中4点以上
一応この基準点も、その年の各問題の難易度によって数点調整されますが、だいたいこんな感じです。
この基準点に届かず合格にたどり着けなかった受験生が大勢います。
税理士試験と違い、科目合格がないので、全科目を1回の試験ですべてクリアする必要があります。
特に選択式は1科目5点中3点以上取る必要があり、これが社労士試験の難しさのポイントです。
一つの科目だけ得意、ある科目は苦手といった状態だとこの選択式の基準点に届かず泣きを見ることになります。
つまり、全科目まんべんなく勉強する必要があります。
社労士試験合格のための勉強時間
いろいろなサイトで見ると社労士試験合格のために必要な勉強時間は約1000時間とされています。
行政書士では約600時間、税理士試験は約3000時間と比べてみると何となく難易度がわかると思います。
自分の合格までの戦略
自分の令和2年の社労士試験の点数は、
・選択式:33/40
・択一式:60/70
です。
自分の合格までの戦略は以下の通りです。
- 必要勉強時間の設定
- 独学を選択
- 過去問を重点的にやる
- 模試の受験
ちなみに自分のスペックは、私大法学部卒、受験時年齢31歳、試験当時は無職、労働系・社会保険系の勉強経験なし、人事労務経験なしといった状態でした。
必要勉強時間の設定
まず、先ほども述べたように社労士試験に合格するためには約1000時間が必要だと言われています。
自分の場合、仕事を辞めて勉強に専念していたことと、年齢が年齢だけに何回も受験すると転職が厳しくなるという理由で1回で確実に合格しようと考えていました。
そこで、単に1000時間勉強するだけでは、ちょっと心もとないなというのが正直なところでした。
もともと頭がいい方ではないことは自覚していたこともあり、必要時間の2倍、つまり、2000時間やれば確実に受かるだろうと考え、2000時間を目標としました。
では、試験日までに2000時間勉強するにはどんなタイムスケジュールとなるのかを次に検討します。
勉強を始めたのは令和2年の1月でしたのであと7,8か月あります。
仮にあと7か月と仮定すると、毎月300時間勉強すれば、7か月で2100時間となり、目標をクリアできます。
1か月300時間とすると、1日の勉強時間は10時間となります。
要するに、毎日10時間勉強すれば、合格できると踏みました。
次にさらに毎日のスケジュールに落とし込んでいきます。
9時に起き、朝ごはん等の準備に1時間とすると10時開始で12時まで2時間、昼ご飯に1時間休憩を取り、13時から18時まで5時間、18時から19時まで夕食として休憩、19時から22時までで3時間と設定し、計10時間となります。
これを愚直に7か月毎日こなしていきました。
1日の目標が10時間なので、10時間勉強したらそれ以上は絶対にやりません。
そうすることで10時間勉強してもある程度は自由時間を確保できるのでリフレッシュを必ずすることができます。
長期間の試験勉強にはモチベーションと体力の維持が必要不可欠です。
ここは休憩も勉強の内と考えて割り切って休むことが重要です。
勉強時間の管理は『Studyplus』というアプリで行っていました。
このアプリでは、次のような利点があります。
- テキストごとに勉強時間を記録できる
- 同じ試験を受験しようとする人の勉強時間を閲覧できる
- 週間目標勉強時間を設定できる
- 試験日までの残り日数がわかる
特にほかの受験生の勉強時間を閲覧できるのはいい刺激となり、モチベーションを上げることができます。
別にアプリを使用しなくても勉強時間の管理はできますが、上記のような利点があるので、使える人は使った方がいいと思います。
独学を選択
独学を選んだ一番の理由は『お金がない』からです笑
通学の予備校に通うと30万円はします。通信講座でも、10万円くらいはかかります。
自分は無職でしたのでその時点でそのお金を捻出できなかったこと、そして、社労士合格後にも大きなお金がかかることが予想されること、この2点で独学を選びました。
社労士は合格すると、実務経験2年以上なければ、事務指定講習を受ける必要があります。
事務指定講習に約8万円、社労士会の登録に約15万円、合わせて20万円以上のお金が必要となります。
合格後を考えると、勉強の段階でお金をかけるのは得策ではないと考えました。
ただ、独学で一番いいのは、時間配分を自分で設定できることです。
通学の場合、当然移動時間がかかりますし、その準備にも時間がかかります。
通学していたら受験仲間もできるでしょうし、その人たちとのコミュニケーションにも時間がとられます。
これを考えると、独学の方が自分の裁量で効率よく勉強できるので、お金ないし、独学でいいか~って感じで独学にしました。
通信講座は、もともと選択肢には入れていませんでした。別に独学で市販のテキストを買うのとそれほど違いを感じられなかったからです。
今年必ず受かるという強い覚悟がある人であれば、合格後の現時点でも、独学で十分だと思います。
ただ、独学の一番の難点がわからないことを質問できないことです。
これは、非常に厄介でした。
ですので、自分の場合は、厚労省や労働局、ハローワーク等のサイトを閲覧したり、Youtubeでいい動画がないかいつも探していました。
それでもわからないことは残るのでそれは丸覚えという荒業でなんとかやりくりしていました。
合格後の今では、独学の場合は、直接年金事務所やハローワークに電話して聞けばいいことに気が付きました。
あたかも社労士のように振る舞い、電話で質問すればちゃんとした正解を教えてくれます。
予備校の講師も優秀でしょうが、実際の実務において、参考にするのは役所の指導です。
役所に質問することは、ただ正解にたどり着けるということだけでなく、実務の予行演習もできるのでお勧めです。
過去問を重点的にやる
社労士試験の勉強で最重要なのは過去問です。
試験は過去問と似たような問題、似たような形式で問われるので過去問を解くことが一番の合格への近道です。
自分の勉強はまず過去問を解き、わからないことを復習がてらテキストを一通り読むという流れで勉強を続けていました。
この過去問→テキストの循環が非常に重要です。
最初は過去問は解けないし、テキストの内容は覚えられないしでテンションは下がりますが、5週目くらいからなんとなく自分の中でも覚えられてきたという実感がわいてきます。
こうなれば好循環に入ったことになるので、過去問とテキストを回すのが楽になってきます。
社労士試験は過去問を10周すれば受かるとよく言われています。
これを真に受け自分はだったら15周すれば確実に受かると思い、実際に15周はしました。
ここで、重要なのは過去問とテキストの回転の速さです。
忘却曲線を考えるとその日、あるいは、1日後に復習するのがベストです。
ただ、それをやっていると科目数が多いので一向に進みません。
例えば、労基を初日にやり、次の日も労基の復習をするとほかにも科目がたくさんあるので、次に労基の勉強が回ってくるのが1か月後とかの状況も発生してきてしまいます。
自分の中では、忘却曲線の記憶力を維持するのは2週間が限界として考えていたので、かならず、2週間以内に同じ科目に戻ってくることを意識していました。
つまり、2週間で全科目を1周するということになります。
これが、結構量が多くて辛いものがありますが、これ以上伸びると必ず忘れ、効率がかなり下がります。
この回転スピードはかなり気を付けて勉強をしていく必要があります。
模試の受験
だいたい5月ごろから予備校各社が社労士試験の模試を開催します。
これは必ず受験する必要があります。
社労士試験は選択式と択一式があり、かなりの長丁場となり、集中力の持続、時間配分の設定等の本番の環境はかなり厳しいです。
しかし、模試を受けておくとその準備をすることができますし、何より、自分の合格までの距離を測ることができます。
おすすめなのはLECの模試です。
LECの特徴はその回数です。
年に4回受験することができ、4回セットでも7,8000円くらいで受験できます。
ただ、受験者数が少なめであることと、問題の難易度が低い傾向にある(自分感覚では本番と同程度)ことは意識しておく必要があります。
でも、4回こなすと本番ではまず緊張しなくなるので非常におすすめです。
なにより点数によって全国ランキングが掲載されるのでモチベーションの維持にも有用です。
おすすめテキスト
みんなが欲しかった! 社労士の教科書
まず一番のおすすめは『みんなが欲しかった! 社労士の教科書』です。
他のテキストだと1科目ごとに1冊あるのが普通ですが、これは全科目を1冊にまとめています。
※労働系と社会保険系の2冊に分割できるので実質的には2冊です。
1冊にすると分量が少ないのでは?と思うかもしれませんが、試験合格に必要な知識は網羅されています。
たくさんテキストを買うより経済的ですし、分量もちょうどいいのでおすすめです。
実際に自分はテキストはこれしか使っていません。
よくわかる社労士 合格するための過去10年本試験問題集
次は最重要ポイントとなる過去問です。社労士試験の過去問といえばこれです。
シンプルですが、過去10年分が掲載されており、解説も比較的わかりやすいです。
解説を読んでもわからない場合は、テキストを読み込むか役所に直接聞きましょう。
社労士試験の範囲の大半はこの上2冊で十分カバーできます。
よくわかる社労士 別冊合格テキスト 直前対策 一般常識・統計/白書/労務管理
次は、社労士試験の一番の落とし穴、一般常識対策です。
これは運要素が非常に高いのですが、それを踏まえてもできる対策としてはこの1冊が有用です。
直前期はこれを丸覚えするくらいでいいです。
将来的に人事コンサルとかをやるなら数字等は使いますが、実務を始めたばかりではあまり使わない知識です。
※この知識があれば顧問先への説明にかなり説得力が増すのは事実ですが…
とにかく直前期に叩き込み、試験後には忘れるくらいでちょうどいいです。
無敵の社労士 (3) 完全無欠の直前対策
直前対策として、先ほどの1冊と合わせて購入しておきたいのが、こちらのテキストです。
こちらの特徴は法改正や判例情報が載っていることです。一般常識で重要な統計数字もわかりやすく掲載されているので勉強もしやすいです。
テキストよりも絵や図解が多くわかりやすいのですらすら読めます。
こちらも直前期に何週も読み込みましょう。
みんなが欲しかった! 社労士 合格のツボ 選択対策
基本的には上記4冊あれば十分合格できます。
ただそれでも不安、あるいは時間が余ったという人にはこの選択式用と択一式用を購入しましょう。
正直なところ、本番の試験より、ちょっと難しめです。
選択式は運要素が強いので、これをやったから受かるということはないですが、知識の穴を埋める感覚で勉強すると効果が期待できます。
まとめ
以上、自分の社労士試験受験の体験を含め、勉強法やおすすめテキストを紹介してきました。
社労士はそれだけで就職も開業もできるし、弁護士や会計士といった超難関資格よりは現実的に取得ができるおすすめ資格です。
あくまでこの記事は自分の1体験の話ですので、その他の方の体験記などを読みながら勉強の参考にしていただければと思います。